朝日新聞 平成26年5月29日朝刊に、「健康食品、品質は大丈夫? 国立研究所、103製品分析」と題する記事が載りました。
要旨は、次のとおりです。
- 国立医薬品食品衛生研究所が、健康食品103製品を分析したところ、その21%にあたる22製品で、表示されている成分が含まれていなかった。
- 103製品の12%にあたる12製品では表示されていない成分が混入していた。例えば、「ビルベリー」の表示がある製品に、より安価な原材料が入っていたがその表示はなかった。
- 別の研究では、32製品(カプセル・錠剤)について、腸内で吸収される状態に形が崩れるかを調べたところ、半数の16製品で形が崩れなかった。
これらの結果から、質の悪い健康食品が市場に流通していることがデータで裏付けられたとし、「利幅を増やすために粗悪品を作る業者がいる可能性がある」、「業界全体で見ても実態は同じだろう」、「メーカーに十分な技術力がないことも要因の一つ」などの有識者の意見で総括されています。
現時点では、今回の記事のベースとなっている研究が手元にありませんので詳細確認はできていませんが、私どもわが国の健康食品の製造現場で従事する者からすると、当該研究は、古いデータを含むとはいえ(データは2005年以降ということです)、この分析結果も、この総括も到底信じがたいことです。
一般的に、わが国における通常の健康食品は、医薬品に準拠した考え方で、製品化・製造・品質管理されています。
これがいわゆるGMP(製造工程管理基準)の考え方で、昨今の食品に対する諸問題(産地・品種偽装による不信感、毒物の意図的混入、アレルギー問題等)、そしてそれらに対する個別の行政の指導と業界の品質保証体制(健康食品GMP,ISO、HACCPの導入等)等から、健康食品を含む加工食品は年々厳しい製造管理、標準化(透明性。簡単に原材料や規格を変更できない)が求められており、それに対応できないメーカー、および結果的に粗悪品を送り出したメーカーは厳しく糾弾され、その結果市場から淘汰されていく運命にあります。
このような品質保証体制の流れは、加工食品の中でも、味・色・臭い等の五感で品質を判別しにくい健康食品では、従前から少しずつさまざまな段階を経て進められてきたもので、最近になって唐突に制定されたものでは無いですから(そのひとつが「健康食品GMP」で、健康食品以外の他の加工食品にはISOやHACCPは導入されてもGMP導入はありません)、当該研究の着手時点でも大半の日本製健康食品の品質は高水準にあったはずですが、たまたま検体となった製品に、粗悪な輸入品、管理レベルの低いメーカー品、悪徳メーカー品などが多く含まれたなど、何らかの特殊な事情があったのかもしれません。
ともあれ、本件をわが国の健康食品事業者の立場で俯瞰すると、 こうした現状の健康食品を取り巻く厳しい製造環境・管理体制・保証体制の中で、当該研究で認められたような粗悪品が、今も市場で、相当な割合を占めて、堂々と流通していることは、極めて考えにくい状況と考えます。